7月下旬から数千件のアドレスからビットコインを流出させ続けているColdcardハードウェアウォレットのエクスプロイトを巡り、FBIがその第一波の攻撃者とみられる人物を特定した可能性があると捜査関係者がみている。第一波だけで約1082.65BTC、当時の価値で約1180万ドル相当が盗まれており、Galaxy Researchが4波すべてを合算して追跡している被害総額は、5200以上のアドレスから引き出された約1816BTC、金額にして約1.16億ドル相当にまで膨らんでいる。

この脆弱性の起点は、Coinkiteが2021年3月にColdcard向けに配信したファームウェアアップデート「バージョン4.0.1」にさかのぼる。このアップデートがシード生成の仕組みを変えてしまっていた。TRM Labsが公表した調査によれば、欠陥のあったコードは乱数生成を専用のハードウェア乱数生成器から迂回させ、代わりにソフトウェアベースの疑似乱数生成器に頼る仕様になっており、盗難が発覚する何年も前から、影響を受けたウォレットの秘密鍵を支えるエントロピーを弱めていたという。

FBI May Have Identified First-Wave Attacker in $116M Coldcard Theft
Image via @WuBlockchain on X

資金の流れをどう追跡したか

BlockとGalaxy Researchがそれぞれ独自に調べたところ、第一波の攻撃者は盗んだ資金を移動させる際に大手ブロックチェーンデータプロバイダーの有料アカウントを利用しており、そのプロバイダーの内部ログがオンチェーン上の攻撃パターンと極めて高い精度で一致していたことが判明した。捜査関係者によれば、この一致こそが法執行機関を容疑者特定に近づけた決め手だという。ただしFBIは公式には身元特定や起訴について何も認めていない。

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複数の攻撃者、複数の波

取引パターンの分析からは、今回の4波にわたるエクスプロイトに複数の攻撃者が関与している可能性が示唆されている。つまり第一波の実行者を特定できたとしても、事件全体の解決には直結しない。捜査当局は被害総額の大半を占める後続の波についても、引き続き資金の追跡を続けている。

数年潜伏しうる自己管理型ウォレットのバグ

欠陥のある2021年のファームウェアアップデートから2026年半ばの悪用発覚まで5年の時間差があったという事実は、ハードウェアウォレット特有のリスクを浮き彫りにしている。監査済みで広く信頼されているはずのデバイスにも、微妙な乱数生成のバグが誰にも気づかれないまま何年も潜み、ある日突然大規模に悪用されうるということだ。自己管理型ウォレットを使うユーザーにとって、今回の事件はハードウェアウォレットのファームウェア更新がどれだけ厳密にレビューされているか、そして脆弱性が発見された際にどれだけ迅速に開示されるかに、改めて厳しい視線が向くきっかけになりそうだ。