バイナンスは今週、量子コンピューティングをめぐる誤解と実態を整理する解説記事を公開した。量子マシンが近い将来ビットコインをはじめとするブロックチェーンの暗号方式を破る可能性があるとして不安を煽る見出しが相次いでいたことへの反論だ。この主張は、共同創業者チャンポン・ジャオ(CZ)氏の発言とも重なる。同氏は、業界が脅威が現実化するよりも十分に前倒しで量子耐性アルゴリズムへ移行できるため、暗号資産業界がパニックに陥る必要はないと繰り返し述べている。
「暗号資産業界がすべきことは、量子耐性(ポスト量子)アルゴリズムへのアップグレードだけだ。だからパニックになる必要はない」とCZ氏は述べており、これを実存的な危機というより管理可能な技術的課題として位置づけている。
実際の脅威はどれほど先か
ビットコインの秘密鍵を保護している楕円曲線暗号を実際に破れるだけの「暗号解読に足る量子コンピューター」は、現時点で存在しない。そうしたマシンを構築するには、論理量子ビット数、エラー率、実行時間の特定の組み合わせが必要だが、現行のどのマシンもその水準には遠く及ばない。「既存の暗号を実際に破れるコンピューターの登場までは、ほぼ確実にあと10年以上はかかる」とコインビューロー共同創業者のニック・パックリン氏は述べており、この見立ては研究者コミュニティの多くに共有されている。
業界はすでに次の一手を準備
とはいえ、この猶予期間が準備を止める理由にはなっていない。研究者らはビットコインとイーサリアム向けに、既存の署名アルゴリズムと量子耐性アルゴリズムを組み合わせたハイブリッド型ポスト量子暗号方式を提案しており、2025年に英国ブロックチェーン協会の学術誌に掲載された論文では、この手法により今後10年で攻撃に必要な量子ビット数を20〜30%削減できる可能性が示されている。狙いは、実用的な量子コンピューターが実際に登場してから慌てて対応するのではなく、ブロックチェーン各陣営が段階的に採用できる移行経路を用意しておくことにある。
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タイミングをめぐる議論が重要な理由
Cointelegraphが報じたように、量子コンピューティングの現状は、確かな技術的進展と過剰な世間の期待の間のどこかに位置しており、専門家の多くは暗号資産に対するリスクを差し迫ったものではなく理論上のものだと捉えている。それでもこの議論が重要なのは、ビットコインの透明かつ改ざん不能な台帳という性質が、この分野の目立った試金石になっているからだ。銀行であれば流出した認証情報を静かに差し替えれば済むが、ブロックチェーンの暗号方式の移行は、単一の管理主体を持たない分散型ネットワーク全体で足並みをそろえる必要がある。だからこそ業界は、脅威が具体化するのを待つのではなく、今からこの議論を始めているのだ。