ステーブルコインUSDeを発行するEthenaと、デジタル資産のプライムブローカーFalconXが、USDeの裏付け資産を機関投資家向けの過剰担保融資に振り向ける10億ドル規模の担保付き倉庫型ファシリティを開設した。FalconXの発表によると、このファシリティは特別目的事業体(SPV)を通じて運用され、FalconXが組成者・サービサー・担保管理者を兼ねる一方、Ethenaは関連資産に対して第一順位の担保権を保持する。担保は適格な第三者カストディアンが保管し、融資の対象は機関投資家のトレーディングデスク、法人の財務部門、決済事業者などを想定している。
この枠組みにより、EthenaはUSDeを裏付ける準備資産に新たな収益源を得ることになる。USDeの利回りはこれまで、現物の暗号資産を保有しつつ同量の先物を売り建てるデルタニュートラル戦略、いわゆるベーシス取引によって主に生み出されてきた。ただしベーシス取引の資金調達コストは市場環境の変化で縮小することがあり、過剰担保型の融資へと収益源を分散させることで、Ethenaは特定の取引戦略の収益性に左右されにくい収益基盤を確保できる。
値動きの激しかった1年半
USDeはこの1年半、決して平坦ではない道を歩んできた。2025年のピーク時には時価総額が140億ドルを超え、一時はTetherのUSDT、CircleのUSDCに次ぐ第3位のステーブルコインに躍り出たものの、その後ベーシス取引の利回りが冷え込み資金が他へ流出したことで、直近では45億ドル程度まで縮小している。
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規模が縮小した現在でも、USDeは非法定通貨担保型ステーブルコインとしては依然として最大級の存在であり、水曜日に開設されたこのファシリティは、Ethenaが単一の戦略への依存度を下げようとしている明確なシグナルと言える。
FalconXが適任である理由
今回の提携は、既存の関係の延長線上にある。FalconXはこれまでもUSDeの現物・デリバティブ・カストディの各事業を支えており、機関投資家向けにOTC流動性を提供するほか、一定の与信・デリバティブ取引ではUSDeを担保として差し入れられるようにしてきた。その関係を10億ドル規模の融資枠にまで拡張することは、FalconXが単なる取引の場にとどまらず、USDeのインフラ層としての役割を一段と深めることを意味する。同時にEthenaにとっては、実体経済向けの融資を大規模に組成できる機関投資家ネットワークをすでに持つパートナーを得ることになる。
大局で見れば
両社はこのファシリティを、オンチェーン資本を担保付きの機関投資家向け与信に振り向けた事例としては過去最大級のものだと位置づけている。この表現からは、ステーブルコイン発行体が暗号資産ネイティブな利回り源の外に目を向けつつあるという、より大きな潮流が見えてくる。ステーブルコイン同士の競争が激化し、ベーシス取引の経済性だけに頼るのが難しくなる中、こうしたファシリティは、無担保の信用リスクではなく実物担保に裏付けられた融資を維持しながら、発行体が収益源を分散させる手段となっている。