DeFiレンディングプロトコルのTerm Labsが、ボールト(資金保管庫)製品のガバナンス機能を突かれ、約850万ドルの損失を被った。Wu Blockchainが報じたところによると、PeckShieldAlertとCertiKのアラートがこの被害を裏付けており、攻撃者は資金の引き出しをボールトに指示できるだけの議決権を握っていたという。今回の攻撃で流出したのは約2,843ETH(当時の価値で約687万ドル)、そして168万USDCで、後者は後に約160万DAIへと交換された。

これまで話題になってきた多くのDeFiハッキングとは異なり、今回の手口にはスマートコントラクトのバグもオラクルの不備もフラッシュローンを使ったトリックも関係していない。攻撃者はただガバナンスの議決権を積み上げ、ボールトに資金の引き渡しを指示する提案を可決させただけだった。そしてコントラクトは設計通りに機能し、その指示に従った。今回悪用されたボールトはTerm Financeのコア事業であるレポ型レンディングの基盤ではなく、Yearn v3のインフラ上に構築されていたもので、レンディングプロトコル本体が直接侵害されたわけではない。

Term Labs Loses $8.5M as Attacker Buys Governance Vote to Drain Vaults
Image via @WuBlockchain on X

コードの欠陥ではなく、ガバナンスへの攻撃

この仕組みが重要なのは、監査が本来検知するはずの脆弱性のカテゴリーを丸ごとすり抜けてしまう点にある。ガバナンス攻撃は、技術的には何も壊すことなく、監査済みのコントラクトをそのまま通過する。脆弱性が存在するのはコントラクトのロジックではなく、議決権がどう分配され、可決後の悪意ある提案がどれだけ迅速に執行されるかという部分だ。報道によれば、攻撃者の当初の資金はTornado Cashを経由したわずか2ETHにまでさかのぼれるといい、この小さな種銭だけで約850万ドルを動かすのに十分な議決権を獲得できたことになる。

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被害の規模は、対象製品にとって決して小さくない。流出した資金は、このボールト製品の全チェーン合計TVLの約68%に相当し、イーサリアム上のTVLに限ればほぼ全額に近い。Term Financeにとって今回はセキュリティ上の初トラブルではなく、2025年5月にも通常のアップグレード中に生じたオラクルの小数点桁ずれが原因で約150万ドルを失っている。もっとも、その際の失敗モードは今回とはまったく別種のものだった。

ガバナンスで守られたDeFiにとっての意味

今回の事件は、ガバナンス経由の攻撃ベクトルもスマートコントラクトの脆弱性と同等に精査されるべきだという見方を裏付ける新たな材料となった。特に、管理する資産価値に対して議決権を安価かつ迅速に積み上げられるプロトコルでは、その必要性が高い。DeFi全体でボールト製品を検討する預け入れ側にとって、Term Labsの一件は、監査歴だけでなくガバナンスプロセスの集中度や意思決定の速さも見極めるべきだという教訓になる。今回はコードが書かれた通りに正しく動いた、まさにそれこそが問題だったのだから。